今日もすっかり日が暮れた。疲れたので早く帰って寝てしまおう。

「…みゃ〜〜〜」
「むっ?」
 いつもの帰宅途中、停留所前。
 猫の声を聞く。
 何だか愛らしい…というよりは獲物を見つけた歓喜の声のような気がした。
 しかし辺りを(簡単にだが)見回してもそれらしき姿はない。
「(気のせい、か?)」
 もしいたとしても、たかが猫に気をかけることもないだろう。
 俺は時刻表を確認して、近くの自販機で缶コーヒーを買った。飲みながら、バスを待つ。
 飲み終わり、そろそろバスが来るな、と思っていたときの事だった。
  ばこっ
「みゃ―――――っ!!」
 停留所内に置いてあったゴミ箱のフタが弾け飛んだかと思うと、突然俺の目前に猫が飛び出してきた!
「うおっ!?」
  どしんっ
 猫はそのまま俺に突進を仕掛けてきた。とっさに俺は体を回転させたが、遠心力が加わった手持ちのバッグに猫がクリーンヒットした。
 猫とバッグがそれぞれ吹っ飛んだ。
「あ―っ!俺の命!!」
 たかがバッグと言うなかれ。
 これには俺の仕事生命がかかった重要書類(始末書ともいう)が詰まっているのだ。
 ビジネスバッグはサラリーマンにとってのまさに命!!
 停留所から結構離れた所まで吹っ飛んだバッグのもとに駆け寄って無事を確認する。
「よしよし、どこも壊れてないな」
 ほっと一息。…したのも束の間。
   ぶろろろろ――
「あ゛。」
 バスが『乗降者無し』と判断してノンストップで行ってしまった。
 今更走って追いかけても無駄だろう。無駄なのだが…
「くっ。…待って下さ――いっ!!」
 追いかけてしまう嗚呼哀しきかな我が性分。
 当然の如く、バスは行ってしまった。
 残ったのは、
「…みゃ〜〜……」
 吹っ飛ばされてぼろぼろになりながらもなぜか勝ち誇った顔をしている猫一匹。
「…このやろう…計算済みかよ…」
 やってくれるじゃないか…。
 しばらく睨み合ったあと、俺は次のバスが来るまでの時間でコンビニに行き、

 ネコ缶のフタを開けずに渡してやった。

「みっ…みゃ……みぃ〜〜〜!?」
  ぶろろろ。
 なかなかナイスなタイミングでバスがやって来た。
「はっはー。またな猫」
 猫はまだネコ缶に夢中だ。

 今日も星がきれいだ。




公式ページの『ノンセクションの8』のサトウさん(原案)が意地悪っぽかったので。
2Pイメージでも可。

2002/10/01

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