きゅきゅ きゅっ。
 青い作業着を来た清掃員は、モップで床を磨いていた。
  がたんっ。 がしゃー…
「ん?」
 音が聞こえた。嫌な音が。
 もとより人がひしめき合って騒がしい場所だが、それでも今の音はかなり大きかった。
 作業を一時中断して、音がした方を振り向く。
「あ゛。」
 低くうめく。ついさっき取り替えたばかりのバケツの中身が、ものの見事に散乱していたのだ。
  大方誰かが、急いでて蹴飛ばしたんだろ―――
 彼はそう考えると、まわりがこれ以上騒ぎ出す前にとりあえずモップで水を吸う事にした。
  びちゃっ。
 あまりいい気分のしない音だ。
 彼は水を充分含んだモップを手にしたままバケツを元通り立たせようとして―――
「な――」
 取っ手に伸ばした手をふいに止めた。
  何だ、今の、声は。
 中に居たクリーム色の仔ネコが「なー」と再び鳴いた。
「何だぁ?お前」
 どうやらバケツを倒した犯人は、まだ現場にとどまっていたらしい。
 とりあえずどうして良いのか分からず、彼は頭に手を当てた。

 しばらく後、きれいになったフロアの反対側で、
 水の入った新しいバケツの隣りに、中身がクリーム色のバケツがかたかた揺れながら置いてあった。
 その近くで、清掃員が仕事をしていた。
 バケツの中からはみ出した耳が見え、「なー」という鳴き声が聞こえていた。



ししゃも話第6話。続きでちょっと異色。
サトウさんがいなかったら絶対KKさんに拾われていたに違いない(言い切りますか)。
バケツに入ってどこでも一緒(某ゲームにあらず)vステキですよね。
まだ続きそうな感じ。どうなるかな…。


2002/7/12


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