緑色のスーツを着込んだサラリーマンが走っていた。
 時計をちらちらと伺いながら、ビジネスバッグをしっかり抱えて走っていた。
 彼は今、時間と戦っているのだ。
 新入社員がこんな早い時期から負ける訳にはいかない。
「絶対間に合ってやる〜〜〜っ」

 クリーム色の仔ネコが走っていた。
 全身緑色の人を目印に、真っ直ぐ真っ直ぐ走っていた。
 ネコは今、彼を追っているのだ。毎朝悩んで、今朝ようやく決心して付いてきたのだ。
 こんなすぐに見失う訳にはいかない。見つかる訳にもいかない。
「な〜〜〜〜〜っ」

「よぅしっ!間に合った!」
  ぷしゅー がたん。 ぶろろろろろ。
 毎朝乗るバスの中で、彼は安堵した。
 勝った。俺は今日も時間に勝ったのだ。
 入り口付近の吊り革に手をかけながら、彼はすがすがしい気分になっていた。

「なーっ」
  ぴょんっ。 とててて…
 彼を乗せたバスの上に、仔ネコが乗っている。
 やった。ボクはおにーさんに追いついたんだ。
 急ブレーキや急発進に対応しながら、ネコは満足そうだった。

 それはとても晴れた初夏の日。



ししゃも話。ちょっと続きます。多分。
そろそろ自分設定が露見してくる頃かと思われ。いや、既にか。
ちょっとフレッシュっていうか『チェイス!チェイス!チェイス!』を意識。
…ししゃもがあの標準顔で必死にサトウさんの後ろを全力疾走かと考えてしまって少しホラーでした。

2002/7/12


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