「…何やってるんだ?」
広くは無い部屋の中の大きくは無いテーブルの上に、一杯のコーヒーが乗っています。
コーヒーからはほこほこと温かそうな湯気が立ち上っていて、お兄さんの目の前に置いてあります。
お兄さんはコーヒーカップの取っ手に手をかけたまま、テーブルの足の近くでもぞもぞ動いているネコさんに向かって、一言疑問を投げかけました。
「なーな――なー」
ネコさんは何かを訴えていますがお兄さんにネコの言葉は分かりません。
「おい、爪立てるなよっ。あーもー揺れるー、コーヒーこぼれるって」
慌ててテーブルからカップを浮かせて、ついでにそのまま口へと運びます。
「なーっ」
ぴょこ、と途端にネコさんはお兄さんの膝にやって来ました。
お兄さんの右手…ではなくて、持っているカップに手を伸ばします。
「なーなー」
お兄さんはカップを口から放して、ごくりと飲み込んでからネコさんを見下ろしました。
「…コレ飲みたいのか?」
「なーっ」
ネコさんは嬉しそうにしっぽを振ります。
「変な奴。ネコって確か熱いの苦手なはずだろ?飲むのか??しかもコーヒーってやっていいのか?」
「な〜」
悩んでいるお兄さんをよそに、ネコさんは「早く早く」と言いたそうに手を動かしています。
「ま、いっか。ほら、気をつけろよ」
お兄さんはゆっくりカップをネコさんの前にまで持って来て、慎重に傾けました。
ネコさんはそれをひとなめ…
「な゛―――っ!!!?」
…した途端、飛び跳ねて部屋中走り出しました。途中、少しむせてました。
「…あーあ。やっぱりネコにブラックは無理だろ」
お兄さんは苦笑しながら立ち上がって、台所へ歩いていきました。
「な゛ーっ、なっ。な――――!!」
ネコさんはこの世のものとは思えない苦さにパニクっていました。
おかしい。おにーさんが飲んでるのに。
いっつもおいしそうに飲んでるのに。
いつも幸せそうな顔をしているのに。
「ほらっ」
「な―――!!…。…な?」
突然目の前に差し出されたお皿に、ネコさんはびっくりして口の中の苦さを少し忘れてしまいました。
お皿の中に入ってるのはミルクでした。お兄さんが台所から持ってきてくれたのです。
「お前にはこっちだろ」
そう言ってお兄さんは、ネコさんの前にお皿をことり、と置きました。
しばらく目をぱちぱちさせていたネコさんは、やがてぴちゃぴちゃとお皿のミルクを飲み始めました。
それは何だかとってもおいしくて。
「な〜〜〜」
ネコさんは嬉しそうに鳴きました。
その様子を、お兄さんがコーヒーを飲みながら幸せそうに眺めていました。
…後日…
「コレはダメー」
「なーっ、なーっ」
「そんな声してもダメなものはダメっ。コレはお前のじゃないのー」
「な――――――」
「鳴くな鳴くな。大っ体キムチを喰うネコがどこにいるんだよ」
「な――っ!…な」
「ここにいて堪るか――っ!」
ししゃも話。突発編。
ししゃもが着実に増えていきます。サトウさんも。
今回のテーマは“ししゃも3歳児化”。
その位の歳の子供って、大人がやってることを何でも真似したがるじゃないですか。そんな感じです。
「おにーさんにできてボクに出来ないものなんてっ!」
…何処からそんな自信が、ってくらいに…
2002/7/3
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