ぽかぽかぽかぽか。今日もいい天気です。

 そんな空を、ピンク色の女の子が飛んでいました。
 その子の背中から生えている羽は薄い薄い膜みたいで、光に照らされてぴかぴかと七色に光っています。
 地面の方を見ながら飛んでいたその子は、ある所でぴたっ、と停止しました。ちょっと進んだ所に何かがいます。
 それは鳥でした。とても大きな鳥でした。
 その子はもちろんのこと、大人も乗れそうなくらいの大きな背中をしています。
 鳥はその子の倍はある黄色い羽を広げて、「クエ―――っ」と鳴きながら、
「………??」
 走っています。広げた羽で空に舞い上がることなく、黄色い鳥は草原を走っています。
 その子は首を傾げました。どうしてハネを持っているのに飛ばないんだろうと思いました。
 その子はそのまま首をひねって自分の背中に付いているものを見ました。はばたいてはいませんが、しっかり宙に浮いています。
 黄色い鳥はまだ走っています。誰もいない草原をひとりで走っています。
「クエ―――――――っ」
 黄色い鳥はその子の真下を通り過ぎて行きました。自然にその子の目は黄色い鳥を追います。
 そして突然今自分が行こうとしている方向にはもう誰も何もいないんじゃないかと考えて、その子はこわくなりました。
 おそるおそる進行方向を見てみると、広い広い草原がどこまでもどこまでも続いています。見えるのは草の緑と空の青だけです。
 あの黄色い鳥はこんなにたくさん走ってきたのです。ずっとひとりで走ってきたのです。
「――――っ」
 その子は身震いしました。急いで後ろを振り返ると、黄色い鳥がもうだいぶ小さくなっていました。
 その子は必死でその黄色い鳥の後を追いかけました。もと来た道を戻りました。
「く、……くっくるゆ〜〜!」


 このままあの道を進んでいたらずっと誰にも会えないかもしれない。
 このままあの人に会えなくなるのは、いや。


 ピンク色の子は飛んでいます。必死な顔で飛んでいます。その顔は今にも泣き出しそうな顔にも見えました。
 黄色い鳥はその子より前の方をやはり必死に走っています。
「クエ――――っ……クエッ?」
 突然、黄色い鳥のスピードが落ちました。
「くっくるゆっ?」
 その子もびっくりしてスピードを落としました。
 黄色い鳥は走りながらきょろきょろと辺りを見回し、ある一点を見た瞬間、
「クエ―――――――――――っ!!!」
 今までに聞いたことの無いほどの大きな声で鳴き出して、一目散に駆けて行きました。
 黄色い鳥が向かった方向を反射的に見ると、男の子と女の子、それにお姉さんみたいな女の人がいました。
 男の子が黄色い鳥に気付いて両手を振って嬉しそうに言いました。
「チョビ―――――っ!」
 女の子と女の人は顔を見合わせて
「まったくひとさわがせよね、いなくなるなんて」
「でもチョビちゃんが見つかって良かったわ」
 笑顔を見せました。
 やがてチョビと呼ばれた黄色い鳥は3人の所にたどり着きました。
 男の子に頭をなでてもらって、そのあと女の子の髪をくわえて走り出しました。
「久し振りだから…“おいしい”んだって」
 男の子がその光景を見ながら言いました。

「………」
 ピンク色の子はじ〜〜〜っとそれを眺めて、目をぱちぱちさせました。
 でもすぐに、
「くっくるゆー」
 また道を戻り始めました。
 このことを教えなければいけないのです。
 このことをあの人に伝えなければいけないのです。
 その子は急いで戻りました。
 途中、ちらっ、と後ろを振り返りました。






「…くっくるゆ――――」
 聞きなれた声を耳にして、魔剣士はゆっくりと顔を上げた。
 見ると、『黒き風を探せ』と偵察を頼んでいたクルクスが猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。
「くっくる…ゆ――っ」
 キキキーッ、という音が聞こえそうな勢いの急ブレーキをかけて、クルクスは魔剣士の目の前で止まった。
「……」
 報告の言葉を待っていると、クルクスがいつになく真剣な目で、
「くっくるゆー」
 魔剣士の目を見て言った。
「(この辺りに黒き風はいなかった、か)」
 少しの安堵感を感じ、軽く息を吐く。魔剣士にとって例の双子がいたとてわざわざ赴くことは無い。
「(これで無駄に一戦交えることは無くなったな)……無駄足を踏ませた」
 すまない、とクルクスの頭をぽんとなでる。
 クルクスは目をぱちぱちさせて、それから魔剣士にさわられた所に両手を持ってきてぽんぽんと叩いた。
 そして先程の黄色い鳥を思い出して、言った。
「くっくるゆ―――」
「?!」
 今度は魔剣士が目を瞬かせた。ついでに口もぱくぱく動いた。
 クルクスは満足そうにガウディウム内部に入っていった。
「どこでそんなことを…おぼえたんだい?」
 魔剣士は固まってしばらく動けそうに無い。


  しってる?
  どうしてハネがあるのかしってる?
  そらをとぶだけじゃないの
  かえるためにあるの
  まってくれてるひとのところへかえるためにハネがあるの
  だからかえってこれたの
  あなたのところにかえってこれたの

  ずっとずっとまっていてくれるのはここではあなただけだから



「…魔剣士様〜〜、いかがなさいましたか〜〜〜?」
 その後、魔剣士はオスカーの『事情はクルクスから聞き(出し)ました』と言わんばかりのわざとらしい声で元に戻った。





 その日、伯爵はお腹一杯で幸せそうだった。










りょうクンのサイトが一周年だったので贈ってみました。アンリミ。
風さんリサさんより雲さんクルクスの行方の方が気になって仕方ないです。
オスカーの腹黒っぷりも目が離せません。
実は少しだけ、らぶ度(何それ)を上げてみました。ぎゃーす。

りょうクンの所では(渡した時はノータイトルだったので)別のタイトルをつけてもらってます★畏れ多いねぇ…。

2003/3/2

BACK

広告 [PR]冷え対策  再就職支援 わけあり商品 無料 チャットレディ ブログ blog